[コメント] 激動の昭和史 沖縄決戦(1971/日)
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火薬の使い方のパターンの乏しさは長尺の戦争映画としては致命的であるし、沖縄らしい温度・湿度を画面に撮り収められていないのもどうかと思う。だが、このシーンの数の多さは尋常ではない。それはつまりワンシーンの時間が短いこと、ひいてはシーンが細切れ・ぶつ切りになっていることにも繋がっており、したがってそれもまたこの映画の弱点のひとつでもあるのだが、しかしとりわけ終盤の小林桂樹・丹波哲郎自決シーン以降はその細切れ・ぶつ切りのシーン群が一貫した映画のエモーションのうねりをかたちづくっている。もちろんそれは計算づくのことだろう。大した構成力だと思う。
また、岡本が戦闘そのものよりも、何の罪もないのにこの悲劇に巻き込まれた民間人の姿を描くことに力点を置いていることは、たとえば徹底して米兵を画面上に表象することを拒んでいる点にもあらわれている。もちろん、正確には「米兵」というよりも「米兵の顔面あるいは頭部」と云うべきであって、ここでの米兵は個的に識別することが不可能なほどに超ロングで捉えられるか、もしくは後ろ姿や不自然に頭部がフレームアウトした姿しか写されない。「戦争映画」においてこのように「敵」を表象しないという方法論を採用する目的としては、ごく大雑把に云って次のふたつが直ちに挙げられるだろう。すなわち「敵を得体の知れない悪魔として描くこと」と「敵を抽象として処理すること」である。この『激動の昭和史 沖縄決戦』においては後者が当てはまることは云うまでもないだろう。各種の資料までも動員しつつ、きわめて具体的に沖縄戦の一部始終を再現しながら、一方で「敵」を抽象化することで戦闘の裏で進行していた民間人の惨状を焦点化する。実にクレバーな映画作りだ。もちろんひとりの日本人として人間として、ここで繰り広げられる悲劇に対しては私も心を痛めるし、いろいろ思うところもある。しかしながらあまりにクレバーに過ぎるために、岡本が演出に込める熱はさほど感じられない。面白さの点では今ひとつと云ったのはつまりそういうことである。
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