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[コメント] 僕の村は戦場だった(1962/露)

「少年兵」ほど痛ましい存在はない。しかしなんだかんだ云って仲間の兵士たちは彼のことを気にかけており、一種の幸福な―きわめて大きな不幸、の中の幸いでしかないが―関係が成立している。そこにささやかな安堵を覚えるとともに、たとえささやかでも安堵を覚えさせてはいけないだろうとも思う。
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まず荒涼としたロケーションがすばらしいし、光を繊細に扱おうとするタルコフスキー的と云ってよいであろう姿勢もよい。しかしこの映画は私にはちょっとナイーヴすぎる。たとえば、現実と夢を対比するに当たって文字通り少年の「夢」を表象してしまう点。現実のシーンだけを描きながら(実際に夢のシーンを用いてこの映画がおこなっていた)少年の現実と夢の交錯的対比がなされていたならばどれほどすばらしかっただろうか。むろんそれはきわめて困難なことであり、ここでのタルコフスキーにはそれだけの演出力がなかったということだろう。あるいはそれは、タルコフスキーが少年に寄り添いすぎていた、と云い換えてもよいかもしれない。しかし私としてはもっと厳しく突き放して描いてほしかったのだ。たかが映画監督が寄り添ったところで「少年兵」には何の救いにもならないのだから(もちろん、タルコフスキーは「何の救いにもならない」ことを承知しつつも寄り添わずにはおれなかったのでしょう。そこがこの映画のすばらしさであって、私とて胸を打たれもするのですが)。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)jollyjoker[*] けにろん[*]

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