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[コメント] ロスト・ワールド ジュラシックパーク(1997/米)

アレン・ダヴィオー的八〇年代スピルバーグ・ルックの延長を求められたに過ぎなかったであろうディーン・カンディの前作よりも、このヤヌス・カミンスキー撮影は「黒」の豊かさにおいて大きく優っている。しかしどうにも軽量級演出。「親子」の主題をジェフ・ゴールドブラム以上に恐竜側で展開させてしまう神経は太い。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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物語の終盤、ティ・レックスが都市に上陸して大暴れするに及んだとき、観客の幾割かは「趣旨変わっとるやんけ」と憤ることだろう。確かにそれはしごく正当な憤り・指摘であるが、同時に、「恐竜映画」(ととりあえず名づけてはみたものの、ひとつのサブ・ジャンルを形成しうるかも疑わしい程度に小規模の映画群)における規範に基づく物云いでしかないということも云っておかなければならない。少なくともスピルバーグは恐竜映画作家である以前に/以上に活劇作家なのだ。恐竜の「都市上陸」が「怪獣映画」のロジックであることはむろんだが、「恐竜を使って何を撮るべきか。『島』でやるべきことはやり尽した。されば次は『都市』だ」という発想がまず空間演出論的に、すなわち活劇作家として、きわめて健全なものであることを率直に認めよう。したがって、問題であるのはあくまでも「健全でも何でも結構だけどさ、大して面白くはないよね」という一点に尽きる。この映画は、大して面白くない。

多くの観客がそう云い、また制作者たち自らもそう云うのだから、前作よりもCGIの技術が大きく進歩しているというのはその通りなのだろう。また恐竜演出の手数も決して劣ってはいない。が、密度というか打撃力というかに欠ける。軽量級とはその謂である。ジュリアン・ムーアローラ・ダーンより落ち、ゴールドブラムが扱いの大きさの拡大に比例した魅力を獲得できていないのも厳しい。とは云えこの映画を完全に見捨てることができないのは、たとえば崖での宙吊り演出の尋常でないしつこさ。「鉄棒」を使って足手まといの少女を一瞬にしてヒーローに変貌させてしまう演出の臆面のなさ。それらはむろん上出来のものではないし、むしろ激怒や呆れと紙一重のものでさえあるが、ここに面白さを見出してみせるのが娯楽映画観客の心意気ってものではないかしら。と私は孤独に呟いてみる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)Sigenoriyuki Orpheus 煽尼采[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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