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[コメント] カリスマ(1999/日)

良い映画がすべてそうであるように、これも非常に明快な映画。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まあ確かに物語は難解なのかもしれない。それは単に「説明」が不足しているからだが、なぜ「説明」が不足するかというと、監督が観客に対して正確に物語を読むことを期待していないからだろう。「説明」を尽くそうとしない監督を批判することはもちろん観客に許されてはいるが、「映画」は「説明」のメディアではないということだけははっきりと云っておかねばなるまい(映画の中の映画『列車の到着』のどこに「説明」があったでしょうか)。一方で、この映画を「説明」過多だと感じる人もいるかもしれない。それはおそらく何やら意味ありげで「説明」調の台詞が多く交わされるからではないかと思うが、しかしそのような台詞を口にする池内博之風吹ジュンは「狂っている」のではなかったか。この映画において言葉は宙吊りにされつづけており、十全に「説明」の機能を果たす台詞はほとんどないと云ってよい。

だが、これは非常に明快な映画だ。それは映画が明快なイメージのみによって綴られているからにほかならない。「カリスマ」も森も何らかの比喩として読まれうるものであるが、そのイメージとしての現前性は単なる記号ではなく映画にふさわしい存在感を獲得している。また、役所広司が第一の「カリスマ」の見張りをしている眼鏡の男を撃ち、そこに松重豊大杉漣らがやってくるシーンの目の覚めるようなカッティングと人物の出入りは、ほとんどドン・シーゲル級のアクション演出だ。そして第二の「カリスマ」爆破シーンでは、役所の発砲と「カリスマ」の爆破がワンフレーム・ワンカットで収められている。確かにここでの爆破CGは最上の出来ではないが、その最上の出来ではないCGを使わざるをえないことになっても、あくまでワンフレーム・ワンカットの明快さを求めるというここでの黒沢の態度はひたすら正しい。

(評価:★4)

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