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[コメント] 月世界旅行(1902/仏)

書割芝居にすぎないが書割自体のデザインは面白い。換言すれば、画心はないが絵心はある。砲弾型ロケットを発射台に押し込める女性たちの衣裳がむやみに肌を露出させていてマック・セネットのベイジング・ビューティーズのよう。あるいは単に観客の欲求を満たそうとするジョルジュ・メリエスの興行魂か。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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驚嘆すべき着想と技術が満載されている、と云いたいところだが、私が心の底から驚いた箇所は次の一点に尽きる。「月面に到着してひとしきり喜ぶと、その場ですぐさま就寝する」というのがそれだ。月面が人間の顔面をかたどっているというのは確かに優れた着想だが、どう頑張っても思いつけないというものではない。月面が顔面であるのならば、そこにロケットが突き刺さって表情を歪めるのはむしろ素直な発想だろう。月面に人間のような生物が生息していることも一般的な想像力で及ぶところだし、そこを未開の地と見なせば、その風俗がいかにも「未開人」的であるのも当然の理だ。彼らをぶっ叩くと白煙と化して消滅するというアイデアにはさすがにたまげるが、これがそのトリック撮影を披露するための逆算的演出だとすれば合点もいく。

しかし、である。「人類史上で初めて月に到達した人々は、まず寝る」という展開は、私のような常人にはどう逆立ちしても生まれない発想だ。完全に、ナチュラルに頭がおかしい。だから、そういう細部がもっとあればいい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)irodori ガリガリ博士[*] けにろん[*]

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