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[コメント] 卍(1964/日)

全篇フルスロットルの抱腹絶倒劇。増村保造にしては並みの出来でも、岸田今日子が掌を「光」の字で埋め尽くす件など、腹筋の酷使を強いられる箇所は枚挙困難だ。また、若尾文子による一点突破では飽き足らないのが増村の偉大なる貪欲で、ここでも川津祐介の乱入以降は怪人バトルロイヤルの様相を呈する。
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アド・リブの介入余地などまるでありそうにない厳密な演技演出で言葉の洪水を操りきったあたり、やはり増村は日本語におけるマシンガントーク演出の最高峰作家だと恐れ入る。原作小説の特色と演出家の資質の交差点であるところの「饒舌」を主軸に据えた作品設計は、ことに滑稽味の抽出にかけて多大な成功を収めている。一方、岸田の告白を聞く「先生」三津田健は原作に従ったに過ぎない存在のはずが、眼をぎょろぎょろさせるばかりで無言を貫くむやみに意味深長な沈黙ぶりによって、一本調子に陥りかねない語りに不気味な休符を打つ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)緑雨[*] disjunctive けにろん[*]

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