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[コメント] フライト(2012/米)

社会人として、人間として、父親としていろいろな想いが去来したんだけど、矜持を持つことや気概を大事にするという点に強く共感した。終盤、冷蔵庫に酒を発見したシーンは、こんな静かな映画なのに、本当に怖かった。
サイモン64

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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レビュアーの皆さんのいろいろな意見を見て、ひとつひとつにうなづけるものがあった。ホント、いろいろな見方ができる映画だなと思う。

私的には、全編を通じての強いリアリティがこの映画の魅力だ。

序盤の墜落シーンは迫力の一言だ。D.ワシントンの操縦ぶりは、御巣鷹山のフライトレコーダーを聞いた日本人が見てもなるほどと思えるできばえだし、彼のアル中ぶりの迫真さとか、そういう意味での直接的なリアリティだけではなく、主人公周辺の物語が進行する一方で事故調査委員会やマスコミや家族と言った背景の物語が並行して進んでいることがはっきりと感じられる演出や構成も非常に素晴らしいと思った。

墜落シーン以外は会話劇だけで進む静かな映画なのだが、主人公が断酒に失敗するのではという点はサスペンスそのものであり、派手にやらかすだけがドキドキの源ではないのだなと改めて思った。缶詰にされたホテルの隣室へのドアが、ホテルの不手際で(神の力なのかもw)偶然開いていて、そこにある冷蔵庫に酒を見つけた時の不安感ときたら、ここ数年では久々の迫真だった。

また、アル中患者は酒を呑むためにどんな嘘でもつくというが、そのことが改めて実感されるリアルさも怖い。でも外人ってほんとに酒が強いんだね。自分があんなに飲んだら、死んじゃうよ。なんてレベルの感想も沸き起こってくる。

大事故起こした機長が酒飲んでたら、許せない人がいても当然だし、許す人だっているだろうし、日航の逆噴射機長よりも自分は日航に対して腹が立っていたので、そのへん微妙だなとかそんなことも思っていた。でも結局は「世の中の信頼を裏切る」ということが罪なのだろうなと思う。そういう意味ではあの航空会社のオーナーも罪人みたいなもんだろう。

おはなしの途中で突然オチの方向性が明確になってしまうのだが、わかっていながらもドキドキさせるゼメキス監督の腕前はすごいなと思う。

まあほんと、いろいろな気持ちが去来する映画だった。自分の周辺に想いが至っても、それで気が散るわけでもなく、見られる作りは感心の一言だ。

ただちょっと自分的に不気味なのはチョイ役含めて「神」を人生の中心軸に置いてる登場人物が重要人物だったりすることで、キリスト教圏では未だにこのような絶対軸(のようにみえるが、時代や立場によってブレブレ)を持つことが共感を得る社会組織が存在しているのかと不思議でならない。「神の意志だと思えば、なにもかもありがたい」という考えは、私に取って思考停止あるいは現実逃避にしか思えないのだ。

あと、映画とは全然関係ないが、なぜか私が見た回の劇場はすごく混んでいて、真隣(まどなり)にうら若き女性二人が座ったのである。おじさんの私は「このおじさんくさーい」とか隣の女性に思われやしないかと思ったり、ダイエットのためお昼はおにぎり一個であったため女性が食っていたポップコーンの匂いに刺激されてお腹が鳴り始めたりとかもう気が気ではない展開が自分自身の中で発生し、また、となりの女性からはものすごくいい香りが漂ってきてさらに雑多な観念が流入してきたりとか、それもまた楽しい体験ではあった。

うん、すごくよく出来てる。「ゼメキスはフォレストガンプの監督」というレビューがあって、それを見て、あ、なるほどと思った。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] G31[*]

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