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[コメント] 座頭市(2003/日)

勝新の『座頭市』にかないっこないのは最初からわかっていた。でも...
サイモン64

かつて上岡龍太郎は藤山寛美の死に際してこんなことを言ったらしい「今後藤山寛美を超える芸人が出るとすれば関東からしか出てこないだろう。なぜなら関西人は彼の偉大さの前に萎縮してしまい、彼を超えられるとは端から考えないから。」私は北野武監督が座頭市を撮ると聞いたときに上岡龍太郎のこの言葉を思い出していた。

私が幼稚園の頃に見た勝新の座頭市は正に超人で、しかも妙なリアリティのある超人だった。さらに勝新という俳優の存在感自体が尋常ではなく、どう考えても勝新の『座頭市』にかないっこないのは最初からわかっていた。でも、そんな風に思いながら見た北野武の「座頭市」は普通に面白い映画だったので正直びっくりした。

勝っているわけではないし、負けているわけでもないし引き分けでもない。勝負を逃げているようにも思えない。なにか全然違うところにぽつんと立っている感じだ。アノ座頭市とは全然違う座頭市が超人的な強さで悪い奴らをやっつけたのだ。金髪だからとかタップがあるからスカしているのかといえばそんなこともなく、不思議な一体感で最後まで楽しく見ることが出来た。

なぜこんな事が出来たのか、なぜ勝新じゃないのに面白い「座頭市」が作れたのかは現時点でもよくわからないが、演技の上手な役者のオーソドックスな場面や、お笑いの場面など色々な要素を上手くつないだ構成力はすばらしいと思う。

おそらくこの監督の性質からして続編は撮らなそうな予感がするので残念だが、何はともあれ「座頭市」が地に堕ちることなく、また違った輝きを与えられたことに安心した。これ以降誰か別の人が「座頭市」を撮ることになっても、少しは手が付けやすくなったんじゃないかなと思う。

(評価:★5)

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