コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] SPIRIT(2006/香港=米)

闘いを通して人の心を描く。これぞカンフー映画。いい作品でした。
アブサン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







劇中で繰り広げられる殺陣の数々を見ているだけでリンチェイの心の動きがわかることに感動する。もちろん普段の演技もうまいんだけど、驕り高ぶった様子が手に取るようにわかる前半のアクションや悲壮感漂う後半の武闘を見ていると、そうそうコレがカンフー映画なんだよ! と思わず鼻息が荒くなってしまった。本作含め、リンチェイの数々の名作で武術シーンを指導してきたユエン・ウーピンのすごさが改めて実感できる。

今までパワー系の外国人とのカンフー戦で納得できるクオリティのものは見かけなかったのだけど、今回のオブライエン戦は互いの長所を出し切ったレベルの高い試合だった。中国を侵略せんとするイケイケの欧米列強と、自棄に陥るも再起して誇りを賭け戦いを受けて立つ中国、それらを背負った二人が戦い、そして認め合う。この心の動きと異種格闘戦を平行して見せるウーピンの手腕は素晴らしい。ベタだけど、オブライエンの「謝謝」とそれに一瞬身構え、敬意を持って礼を返すリンチェイもうまい。

中村獅童との最終戦もとてもよかった。互いの武器交換なんて古きよき香港映画のようでめちゃくちゃ燃えるし、『死亡遊戯』のフィリピノカリを思い起こさせるような、千切れた三節棍の使い方には思わず震えてしまう。『ワンチャイ』でリンチェイが演じた役の衣装やポーズを『酔拳2』のジャッキーが真似たり、ブルース・リーの実戦的な思想を受け継いだ映画をドニーさんが撮ったり、影響を与え合う香港映画のアクションにはファンとして感動せずにいられないんだよなあ。

ラスト、死を覚悟したリンチェイは全てを出し切るように容赦ない攻撃を獅童に浴びせまくる。しかし最後の一撃の瞬間、父のいた高みへとたどり着き、止めをささずに満足した表情で人生を終える… という美しさは、言葉も出ないくらいだった。アクション俳優リー・リンチェイの有終の美を飾るにふさわしい、素晴らしいカンフー映画でした。

ちなみに、このシーンは2年後のドニーさんの『イップ・マン 序章』に受け継がれていてまた感動するのです。(今作『SPIRIT』の主役である霍元甲という人物は実在して、ブルース・リーが演じた『ドラゴン 怒りの鉄拳』の陳眞のお師匠さんでもある。そして、「イップ・マン」でドニー・イェンが演じた葉問という人物は、ブルース・リー本人の師匠なのだ。映画はつながっているのである。あとドニーさんはブルース・リーおたく。自身もリメイク作品で陳眞を演じてる)

あとリンチェイファンとしては、幸せそうに子供と戯れる彼を見ているだけでも嬉しくなってしまうんだなあ。香港時代の声はほとんどアフレコで吹き替えなんだけど、この人の地声って妙に魅力的なんだよね。その声ではしゃぐ弁髪姿のリンチェイを見てるとねえ、過去の作品が頭をよぎったり、もういろんな想いが胸にこみ上げてくるんだよねえ。本当にいい映画ですよ、この作品。

(蛇足として、前半明るく後半暗くなる話の構成には『方世玉』シリーズを、絶望に沈み髪を振り乱す姿には『大地無限』を、合成のような修行風景や明るくはしゃぐ姿には『少林寺』を、ふとした吐息や叫びには『リーサルウェポン4』の断末魔を、凛とした姿にはもちろん『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズをといったように、ことあるごとにリンチェイの歴史を思い出し、目頭が熱くなってしまったことを告白しておきます)

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)G31[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。