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[コメント] ジョン・ウィック(2014/米=カナダ=中国)

「最強の殺し屋ジョン・ウィック」なんてものは出てこず、「ジョン・ウィックがいかにクソ雑魚か」だけが執拗に繰り返し描かれる意味不明な映画。「キアヌ強すぎ」「殺しすぎ」「犬を殺された恨みでマフィアを潰す」とか、全部嘘だから。
アブサン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画を見る限りジョン・ウィックはとにかくクソ雑魚だ。しつこいくらいその醜態が描かれる。

「最強の殺し屋ジョン・ウィック」が宿泊する部屋に女殺し屋が侵入してきたのに一切気づかない場面(なんでだ)、苦労して敵の取引現場を聞き出したのに何の作戦もなく突撃して逆に捕まる場面(なんでだ)と、「ウィックの絶体絶命」の場面が2回ある。(困ったことに、オープニングでチンピラに叩きのめされてもいる)

驚いたことにこの場面は両方、ジョン・ウィックの力だけでは絶対に生還できない「詰み」の状況なのだ。

しかし都合よく、敵に雇われていた友人(デフォー)が寝返ってウィックを援護してくれたおかげで(なぜだ)、「2回の絶体絶命の詰み」から脱出できるのである。(ていうか、デフォーに狙われてたことも含めれば3回だ)

こんな展開で「最強の殺し屋キャラ」だと、いったい誰が信じるのだろう。このクソ映画のクソ馬鹿監督は、「最強の殺し屋とは何か」を一切考えていない。「理由は何でもいいからピンチになって、テキトーに脱出すればアクション映画でしょ?」と思っているような信じがたい低脳である。(しかもこれでスタントマン出身であることを誇っているらしいのだから、アジア映画のスタント出身監督との実力の差に涙が出る)

アクション映画というものは、主人公の行動で困難を打破し、それが爽快感あるアクションで描かれることが醍醐味だろう。「主人公が関与しないところで、敵が勝手に死んで助かりました」は出来の悪いコメディでしかない。敵のボスがジョン・ウィックのことをバーバヤーガだブギーマンだと大げさにビビッてたけど、こいつは主人公のくせに自分の力でピンチから脱出することもできないのだ。それはただのクソ雑魚だ。

そんな展開にするならばデフォーの出番をもう少し増やして仲間としての関係性を描けばよかったのに、彼の人となりは何も描かれないから、そのポジションですらない。ただの「クソ都合のいいマジックアイテム扱い」なのだ。そんなものに助けられないと話が進まない主人公って、もうその時点で物語として100%間違ってるだろ。幼児向けの絵本よりも甘口である。

「殺し屋のみが利用する殺し厳禁のホテル」という面白くなりそうな設定も、すぐ掟を破る女殺し屋が現れるせいでいきなり台無しだ。それでは普通のホテルを利用してるのとなにも変わらなくて、要はこの設定、警察の介入等ストーリー上の面倒な部分を省きたいという、制作者の都合のためにしか機能していないのである。ウィックのピンチをデフォーが勝手に解決してくれるのもそうで、自分らで考えた「最強の殺し屋」「殺し屋専用ホテル」「絶体絶命のピンチ」などの設定や状況を、真面目に展開する気が制作者にまるでないのだ。

その後のスト−リーは女殺し屋が絡みつつデフォーの話に移るのだが、この映画は売りである「犬を殺された恨みでジョン・ウィックがマフィアを壊滅させる」というあらすじすら守れていない。核である「犬の復讐」ではなく、「大して意味のないルールを破ったことだけが特徴の女殺し屋」と「頼まれたわけでもないのに毎回助けてくれる便利な仲間」にストーリーの進行を頼らないといけないのだから、相当にクソゴミな脚本である。

ウィックから女殺し屋の監視をまかされた隣の部屋の殺し屋も油断してすぐ殺されるし、バカと間抜けしか出てこなくて殺し屋のデフレもひどいものだ。コンビニバイトの方がよほど自分の仕事を真面目にこなしている。「デフォーに助けてもらわないと何もできないウィック」抜きにしても、「最強の殺し屋」というウィックの肩書きが地に落ちる描写しかない。

さらにこの女殺し屋、禁忌であるホテルの掟を破ってまで仕事を請け負った挙句、それすらも失敗したというのに、何故か敵チームの中で偉そうにドヤ顔しているのだ。いや、お前は何一つ仕事を成功させていないんだぞ。こいつら数分前のことすら覚えていないのか。その後ルールを破った罰で組織に呼び出されるのだが、それにも気づかないで無抵抗のまま制裁されるのだから、本当にただのおバカさんである。そんなバカがウィックを追い詰める展開が、どれほど物語を殺すかわからないのだろうか。

ちなみに女殺し屋の制裁シーンは組織の連中が「円陣になって」銃で撃ち殺してたのだが、それじゃお互いの銃弾が当たって全員相打ちになるだろ。どこまで馬鹿なんだこの映画の殺し屋たちは。『RONIN』でデニーロショーン・ビーンを叱ってただろ。「アクションの専門家たるスタントマンが作った、工夫を凝らしたアクション映画」のはずだが、何なんだこのゴミの塊は?

ラスト、呑気なウィックは、敵組織を裏切って自分の命を2回も(実際は3回)救ってくれたデフォーに危険が及んでいることなど考えも及ばばない。敵のボスが電話してきてくれてようやく彼が殺されたことを知って怒り爆発という、どこまでジョン・ウィックを間抜けに描けば気が済むのかというようなひどい展開だ。もう犬すら関係ねえし。クソ雑魚にふさわしいバカなクライマックスといえばそうなのだが。

しかしやはり、チンピラごときに家宅侵入されてボコられ車をパクられるわ、妻の形見の子犬を殺されるわ、ピンチは毎回友達に助けてもらわないと何もできないわ、しかもその友達が殺されたことを電話で教えてもらうわで「最強の殺し屋」のつもりって、いったいどんな脳みそしてたらそんな映画になるのか、本当に理解ができない。

あと肝心のアクションシーンについては正直、キアヌの動きがイマイチすぎるのが辛い。せっかくの長回しなのに動作が連続してなくて、練習どおりの動きをキアヌが必死でこなしている間は他のスタントの皆さんが待ってくれているので、見ていてとても残念な気持ちになる。そもそもキアヌはあのボーッとした歩き姿からしてもう運動神経が悪そうだ。この「使えないデクノボー感」は、たしかに劇中の間抜けなクソ雑魚像にぴったりと言えばそうなのだが。

結局、こやつらは表面的なアクションシーンすら上手く撮ることが出来ていない。作り手にアクション映画をつくる能力、というよりも真面目に物語を考えるつもりがなさ過ぎた。

せめてジョン・ウィックの敵は子犬を殺したチンピラなのか女殺し屋なのかボスなのかくらい決めておけ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)DSCH[*] けにろん[*]

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