ノリの軽いおちゃらけムービーであることは否定できないものの、オブラートに包まれた毒には驚いた。わざわざ災害シーンを振りながら、女を抱いてしまうような大胆不敵な愚行を繰り返す彼だが、ストーリーとしてはそれを完全に許してしまうという立場が貫かれている。普段はシケた街に閉じ込められている俺たちがこのくらいのことやって何が悪い、とでも言わんばかりの展開。とんでもないガス抜き効果を持ち合わせた映像、痛快この上無い。

そして、ド派手なアクションのウラに書き込まれた悲哀の数々よ。特にマイケル・ルーカー演じるおっさんはリアル過ぎて泣ける。「閉じ込めたい」と思いながらも、「俺がお前の部屋へ行っていいのか？」と問いかけてしまうおっさん。帰りを待ちながら、自らを律するかのように部屋の鍵を修理・強化して待ち構えているおっさん。

主人公はあくまでも“泥棒”に過ぎないのだが、洗練されたシステムに駆逐された旧来の泥棒をよみがえらせ、あくまでも少年然とした姿として描いたところにはむしろ隔世の感がある。