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[コメント] オブリビオン(2013/米)

このバランス感覚はナメちゃいけない気がする
炭酸飲料

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この、ジョセフ・コシンスキーという監督。 彼はきっとSFというジャンルを根っから愛しているのだろう。 本編鑑賞中、何度も、心の片隅から、過去に作られたSF作品たちが思い返された。 これはこの監督の前作「トロン・レガシー」にもあった感覚だ。 「トロン・レガシー」では、いわば"動的なSF"への憧憬が見て取れた。 だが本作は"静的なSF"へのそれを感じる。 映像、物語、演出からくる表面的な愛情ではなく、 もっと、"SF"という思想的なものへの愛情。 それは「2001年宇宙の旅」であったり、「ガタカ」であったり、「月に囚われた男」であったり。 映像、物語、演出、至る所から、それらの作品たちが顔を出す。

別に、この「オブリビオン」という作品がそれらの過去のSF作品たちに肩を並べる名作だとか言うつもりではない。 かといって、ただのオマージュ、パクりに留まっている作品でも断じて、ない。

この作品はいくつかの"センス・オブ・ワンダー(SF用語で、不思議さを感じる事象)"で構成されている。 序盤の未来的かつ無機質な生活、荒廃した地上の造形。謎をばらまく。 中盤の"エイリアン"の正体、主人公のアイデンティティのうつろい。ひとつの謎を明かし、さらなる謎を提示する。 そして終盤の収束。 この流れはとても丁寧で美しくまとめ上げていると思う。 フライト・レコーダーによる伏線回収は、 「伏線回収」と機能的に表現するにはあまりに素敵な演出だ。

映画、特にSF好きからすれば、少し頭を巡らせれば、先に答えを導ける程度のネタではあるのだろう。 でも、その頭を巡らせる作業は、心地よいものではなかっただろうか。 荒唐無稽な知的好奇心に思いを馳せ、静かな快感は得られなかっただろうか。 比較的派手な銃撃戦やアクションシーンはあったにもかかわらず、どこか静かな作品であると錯覚したのはそこにあるような気がするのだ。

古き善きSF作品を見た気もする。 だがもっと即物的で、万人向けの娯楽作と言っても差支えなく。 監督として突出した手腕を見せつけられたわけでもなく。 でも愛情は伝わる。 このバランス感覚はナメちゃいけない気がする。

・・・やっぱり大げさに言ってる気がするんだけどねぇ。

(評価:★4)

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