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[コメント] ブラック・ダリア(2006/米=独)

ウェルズ的なパンフォーカスショットや階段を使った窃視、或いはクラシカルな撮影などまあ悪くはないのだが、それ以上につまらない演出が10も20も積み重なって厭になる。
赤い戦車

序盤、映画館で主要人物3人が手を握る場面がある。ここでの光は暗すぎてスカヨハのアップが全く美しくなく、またカット割もカメラが上から降下して被写体に近づくなど「手を握る」という動作を捉えるにはいささかアクロバティックすぎる。大体今どきそんな男女三角関係の描き方ってあるかよ。古すぎやしないか?

他にも死体が発見された後、スカヨハがボビーのことを聞かれて答えるのに躊躇うショット、この「躊躇い」の表現に関する演出が存在していない。ただ女がハッとして黙るだけ。せめて煙草を吸わせるなり、玄関の緩やかな階段を利用して上下の運動を取り入れたりすればよいものを、この監督は何の方策も立てていない。これは残り2人のメイン女優にしても同じで、「運命の女」ヒラリー・スワンクが初登場する場面ではアーロン・エッカートの視点として処理すべきところを第三者の視点で描いてしまったり、映画全体を通して一挙に燃え上がる必殺の「ショット」、必殺の「編集」というものが一切ない。

詳しくは割愛するが、最後の30分は単なる辻褄合せに終始して恐ろしく言語的かつ退屈。私は原作のファンではあるが、映画でこんなものを見せられてもちっとも嬉しくない。私は確固たる美学に基づいた「演出」が観たい。

(評価:★2)

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