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[コメント] 少年と自転車(2011/ベルギー=仏=伊)

傑作。素人目に観ても運動感が物凄い。シーンが何かの動作の最中に始まり、動作の途中でまた次のシーンへと続いていく。エスタブリッシングショットを撮って次は寄りを撮って、というような撮り方ではない。私にとってこれはアクション映画に見える。それは「走行」「自転車」のような一目瞭然のものから「よじ登る」運動の反復、そして最後の「落下」にいたるまで続く。
赤い戦車

子供のそうした運動を捉えていくカメラは手持ち主体の長回しで子供から離れない。例えばセシル・ドゥ・フランスの初登場シーンは女優を特権的に扱わず子供が走り回る中でしがみつき、ようやくオフスクリーンから飛び込んでくるし、レストランでの父親との邂逅もまず子供の動きを追いかけ大人の動きは追わない。そんな中で難度の高いアクション(自転車の技を披露する少年が帰ろうとするセシルの車をぐるぐる回る場面など)をさり気なくショットの途中に混ぜてくるあたり、どうやらリアリティを装うつもりなどさらさらなく、始めから映画を目指して作られているようだ。オフスクリーンに氾濫する効果音からもそれは窺えるし、照明にかなり気を遣っていることからも分かる。手持ち主体のカメラはその機動力でもって子供たちの予期せぬ動きを見逃さないための必然だろう。

それにしてもこうした子供たちの動きを追いかける視点は、ジャック・ドワイヨンからの影響もあるのではないだろうか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得

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