コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ムーンライズ・キングダム(2012/米)

初期作にみられた毒やスノッブ臭さは薄まりつつも構図・色彩・カメラワーク・スロー等作家性は維持し、演出力自体も更に向上がなされていて、乗りに乗った無敵感さえ漂う。ウェス・アンダーソンは名実共に現代アメリカ映画を代表する監督に成熟した。一様なアップの撮り方に疑問を持つ部分もあるが、子供たちの顔つきが皆良いのでよしとしよう。
赤い戦車

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







もうジャレッド・ギルマンカーラ・ヘイワードの幸福溢れる「道行」から、この作品が愛おしくなる。文通にフレンチキスに浜辺のダンス、たまらない。その後隠密作戦から隣島に渡り結婚式を挙げるのだが、ここでの感動的な高速度撮影を皮切りに、映画の後半は一大活劇として疾走し出す。

ちなみにベンジャミン・ブリテンの「青少年のための管弦楽入門(パーセルの主題による変奏曲とフーガ)」は劇中で言及される通り、各楽器のソロプレイの後全合奏が行われる。本作の構成もこれを踏まえてか、バラバラであった人間たちが最後にまとまって大団円、というものになっている。

しかしここまで作家性と娯楽性が調和された作品を出されると、逆にあざとさを感じてもよいはずなのだが、あまりに眼に心地よいのでもうどうでもよくなってくる。視覚面ではついにキューブリックに並んだな、とさえ思わせる。

・エンドクレジットの楽しさも見事。途中で席を立たないように。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)ゑぎ[*] 週一本 けにろん[*] セント[*] tredair

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。