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[コメント] イコライザー(2014/米)

3.5。「円」「回転」のモチーフは「水」と結びついて「循環するもの」となり、ひいては「悪を本来あるべき姿(正義)に戻す者=イコライザー」の主題となって画面に現れる。その視覚化は見事であるが、『ザ・シューター』という00年代最高級の活劇を目にした者にとって、本作は悪くないという程度の出来であって少々物足りない。
赤い戦車

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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第一ショットの夕景(太陽),第二ショットのパラボラアンテナ(これはラスト近くの通りを行くワシントンのロングショットで再び現れる)、回想における観覧車、結婚指輪、卵型のオルゴール、真上から捉えられたハチミツを煮る調理具とガスコンロ、マフィアの秘密基地にやってきた警官の一人が回転させる吊り具、銃口、手錠、ヘリコプターの回転翼、車のハンドルやタイヤ、ホームセンターの天井扇、窓に空いた弾痕、凶器の一つとなるハンドドリル、野球の球、眼球、コップに湛えられた末期の水、出しっ放しにされた水道、汚職警官が車の警告音を止めに行く際の散水具、スプリンクラー、海、マフィアのボスを殺害する電気、そして勿論時計。ざっと思いついただけでも「円」「回転」「水」のモチーフは画面上にこれだけある。

これら「円」「水」はいくら回転しても形は変わらず、循環してまた元に戻っていくという特徴を持つ。本来あるべき姿のままである。敵に機会を与え決断を促し、汚職警官を更生させ悪を抹殺し街を本来あるべき姿へと戻すEqualizer(意味は均一化、等しくするもの)の主題としてそれらは紛れもなく意図的に画面上に視覚化されているのだ。今どき珍しい芸当だと思う。

それにしても、私はあの眼球へのズームとそれに続く「これ見ましたよ(アクションで使いますよ)」的なカット編集は野暮ったい説明ショットに思えて好まない。シーゲルフライシャーらアクションの天才たちなら会話の最中に印象付ける程度でこれ見よがしには映さない筈だ。

マートン・ソーカス演じる悪役のキャラの立て方も途中までは実に素晴らしかったが、結局は不発に終わる。特に最後のホームセンターで「銃」を持って闘ってしまうのがダメ。彼が最初凄みを出していたのは、ワシントンと同じく肉弾戦の人(アイリッシュギャングのボスを殴り殺す、配下の娼婦を絞殺)として存在していたからであって、終盤のホームセンターのバトルが盛り上がりそうで臨界点にまで至らないのは彼が「銃」を手に取りその他大勢の敵になってしまうから。彼もまたホームセンターの道具を殺人用に駆使してワシントンと戦ってくれればより楽しかったのだが。

それでも上記の通り、シナリオ上では出てこない視覚イメージの連鎖を明らかに意図しているわけだから、今回は少し失望したものの、やはりフークアは現代において支持すべき数少ない監督と思う。コレット=セラアントワン・フークアウェイン・クラマーら70年代B級アクションの精神を受け継ぐ作家たち(そのピラミッドの頂点にはマイケル・マンがいる)を擁護していかねばならん。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)プロキオン14[*] 死ぬまでシネマ[*] ゑぎ[*]

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