[コメント] ブラックハット(2015/米)
冒頭のCGによる電気を視覚化した光の洪水と、ジャカルタの炎を持った群集の流れは明らかに結び付けられている。デジタルの戦いが現実世界の戦いへと変貌するわけだ。しかし、どうやらマンはハッキングにはあまり興味がなく、ヘムズワースとタン・ウェイとのメロドラマを撮りたそうにしていて序盤は居心地が悪い。実際そうなる中盤以降が泣ける。
この男女は復讐以外何もないのがいい。仮に成功裏に終わったとしても、この2人の前途には虚空が広がっている。そんな彼らをマイケル・マンは逆立ちした子供やら発信器を外してくれる工場のおっさんやらなどと共にその行動のみを捉え続ける。一瞬一瞬のショットに、現前にある世界そのものを映す。超ハード、泣かせる。一点、中国から飛行機で飛び立つ際、タン・ウェイの表情が少し泣き顔を作り気味のように思えたのが微妙かな。あそこはより無表情の方が好みだった。
まだ、中盤までのカメラの揺れが酷い。韓国料理屋の格闘なんかブレすぎてやばいっしょ。中華街を疾走する捜査班を捉えたショットもギリギリだと思う。こうした雑に思えるショットが終盤徐々に締まっていく。
それはともかくとして、ヘムズワースがNSAにハッキングする際、他の仲間が退出するのにタン・ウェイだけが部屋に残る。こういったところがマイケル・マンの良さなわけだ。一番面白かったのはビルから車落とす場面。何をしようとしているのかさっぱりわからないんだけど、人物の行動だけは逐一映す。映画だな、としか言いようの無い感覚が生まれてくる。ハードボイルド。
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