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[コメント] 神々のたそがれ(2013/露)

カメラの手前に無関係の人・物を横切らせ、或は視界を遮るように奇怪かつ無意味な行動をとらせる。また、メインとなる被写体・出来事とは別に画面奥にも別の運動を生起させることで重層性を画面に定着させ、よく映し出される宙吊りの物体の揺れに煙・水・炎といった諸要素を駆使し光と影の変化をも画面内に呼び込み、活劇性まで漲らせる。前半のポリフォニックな魅力は傑作といっていい。
赤い戦車

しかし、100分過ぎから画面のテンションが下がり始め、2時間過ぎた辺りからカット数も増加傾向に陥り、それに伴って活劇性も減衰。ここはゲルマン死後に息子が引き継いで編集した部分なのだろうか。正直多声的な響きが消え去る後半は観ていて辛かった。ま、カメラ目線で人物が話しかけてくる演出に関してはあんまり私の趣味ではない、というのもあるが。主人公の男が笛を吹けるし、楽隊も登場してるんだから、合奏して野外を行進するようなミュージカル的場面を一つは拵えてほしかったね。

さほどの出来とは思わなかったものの、廊下の奥を捉えた見事な縦構図が何か所かあったことは指摘しておかねばなるまい。手前を通り過ぎる人、真ん中にロバ、奥の雨煙の中から人影が走り込んでくる。長回しの最後にこういう構図を視界へ放り込んでくるところは好ましい。

猥雑な物が画面内に犇めきあう中、白衣、鳥、包帯、牛乳、羽毛と「白」の清潔さがひときわ印象的。それらを引き継いだラストショットの雪には解放感があり、映画を締めくくる視覚的納得性がある。

(評価:★3)

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