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[コメント] プレイタイム(1967/仏)

冒頭、ディープ・フォーカスで捉えられた屋内。手前に中年の夫婦が何やら会話しながら座っており、後方にはマネキンのように微動だにしない女性たち数人が一定の間隔を保って立っている。その中間の通路を奥や手前に移動しつつ会話をする様々な人々。一体誰を、何処を観るべき映画なのだろうか?
赤い戦車

次にカメラは通路の奥へ移動し第1カットの反対側を切り返して映す。そこでも様々な人々が映っては消えていく。そこで私は気付く、「ああ、これは全員=世界を描こうとしている映画なのだ」と。

それこそ様々な人種が混じり、言語が飛び交うこの映画はまさしく世界そのものを取り込もうとしている。

しかし、私がそれ以上に本作を気に入った理由は、強烈な自由さにある。それは小津ブレッソンのように、厳格な形式の統一、徹底的な演出によってしかもたらされない種類の自由さなのだ。画面奥の小さな隅で行われる人物の微かな動きまでもが計算されて撮られている(DVD特典のインタビューによるとジャック・タチは登場人物の動きを一人一人自らで演じてみせたという。信じ難い!!)。クライマックスとなるレストランの喧騒は至福とも言うべき名場面だ。更にその後の、エピローグでのラウンドアバウトと自動車のメリーゴーラウンドの豪快な回転運動!これにはもう降参する他ない。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)動物園のクマ[*] ゑぎ[*] 3819695[*]

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