中井貴一。田舎者風情丸出しで、家族の為に少しでも金を稼ごうとする吉村をこんなにもおかしみと、誠実さで演じられる役者がいるだろうか。 そこにはあざとさも、卑しさも全く無く、実直さに溢れた吉村の姿があるばかりである。 飄々とした姿を裏切るような剣の巧みさ、その鋭い眼差しに吉村の武士としての誇りがある。

観ながら、そして家に帰って、また思い出し、何度も泣いた。 今の世なら、死ななくてもよかったのに。誇りと死に場所を求めて彷徨う吉村を救えない時代が悲しかった。

「おもさげながんす」・・・・・はにかんだような吉村の表情が忘れられない。