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[コメント] 泥の河(1981/日)

どうする事もできない「大人の事情」に翻弄される子供たちが悲しく、切ない。
青山実花

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







うどん屋の子供・信雄と、廓舟の子供・喜一。出会いはとても自然で、屈託が無く、「あぁ、子供の頃って、同じくらいの年恰好の子にこんな風に声を掛けて友達になれたんだよな」と、大人になってしまった今の自分にはできない行為を、羨ましいような思いで見た。

田村高廣藤田弓子が子供たちに接する時の様子が素晴らしい。廓舟の子だからと差別する事もなく、自分の子も他人の子を分け隔てなく可愛がる。社会が子供を育てるというのは、こういう事を言うのだろう。

子供が乗っている舟で体を売る加賀まりこの行為は、決して褒められたものではないが、私はある場面で大変に感動したんだ。それは、信雄の母が、「人手が足りないから店を手伝え」と信雄を呼びに来た時、それを聞いた加賀まりこが、「銀子、お前も手伝っておやり」と娘に言った場面。「この母親は、思っているより真っ当なのかもしれない」と、その場面が心に沁みた。

喜一と銀子に比べたら、まだ信雄の方が幸せに感じるが、そんな彼の両親だって、何か複雑な事情を抱えているようで、入院している「知らないおばさん」に土下座する母の姿は、少年の胸に強烈に印象に残ったに違いない。

喜一にとって蟹を燃やすという行為は、やり場のない怒りやストレスを解消する、唯一の方法なのかもしれない。大人になれば、それらを解消する別の方法を、彼は見つけるだろう。それが何かは分からないが、ちょっと怖ろしい気もする。

どうかあの子供たちが幸せに生きられますようにと、願わずにはいられない。

(評価:★4)

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