個人的に私が好きなのは仲谷昇。妻に先立たれて7年。女日照の毎日に突如現れた球磨子に振り回され、後先考えずに籍まで入れてしまうダメ中年ぶりを説得力のある演技で好演。親族会議で皆に責められ、マンションに帰れば球磨子に責められ、そりゃあオッサンも辛い毎日だろうよと、同情したくもなる。

そして、その球磨子を演じる桃井かおり。育ちの悪い蓮っ葉な女になり切った演技に圧倒される。法廷で、自分に不利な証言をする証人に食ってかかる様子など、リアルすぎて逆に笑えてきた。

岩下志麻。心で桃井かおりを侮蔑しながらも、最後まで弁護士としての立場を全うしたその姿勢に頭が下がる。相手によって言葉遣いさえ変える法廷での策略。さらに私生活では、生き別れた子供に中々会えないという淋しさを抱え、クールな法廷での態度とは別の顔を見せる。月に一度会う子供に必ず手土産を渡すシーンなど、母としての心が辛かった。

そして多くの方が書かれているように、ほんの数分の登場シーンながら、他の誰をも寄せ付けない演技を見せた山田五十鈴。実際この人に、「おだまり！」と言われたら、声も出なくなりそう。

法廷物としても大変面白い。2009年に始まった裁判員制度。下手なPRビデオより、これを観た方がよほど参考になりそうだ。