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[コメント] チャップリンの替玉(1916/米)

ストーリー、アイデア、アクションのバランスが程よくまとまっているSO-SO作品
junojuna

 ミューチュアル社移籍第一作。記念すべき第一作は、これまで培ってきたコミックパフォーマンスの演出、演技両面において上々なバランスを湛えるのに成功したとても安定感のある作品に仕上がっている。作品中大きく逸脱することなく、チャップリンの演芸芸術がよりシンプルで溌剌としたテンションで、新機軸という程ではないにしても作品ヴォリュームのパッケージ感覚に優れ、映画経験値が存分に発揮された出来栄えといえる。まだまだ20世紀初頭といえるこの時代に、舞台設定をモダンなデパートという枠組みにしたことは、なかなかトレンドな感覚に敏感であることを伺わせる一面でもある。その意味では、後にそのモダンな時代感を否定的に捉えた『モダン・タイムス』の原点ともいえる描写群といえて、特にエレベーターに遊ばれるチャーリーの件などは、チャップリンのあまのじゃく的な童心によって茶化されることで、その諧謔精神の息吹が垣間見えひときわ目覚ましい。この時点ではまだペーソス以前のチャーリーではあるが、本作における映画バランスの高さは後の作風変化が予見できる成長過程として確かである。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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