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[コメント] チャップリンの番頭(1916/米)

作品の薄さとは裏腹に芸の細かさやナンセンスとウィットのバランス感覚が職人コント作家の真髄を見せてSO-SO
junojuna

 笑いの質がより繊細になってきた職人仕事の冴えが魅せる技術度の高い作品である。チャップリンのおかしみを際立たせるテクニックの豊富さが随所に盛り込まれており、シチュエーションがひとつながらこれだけの深みをものとする創造性は、やはりキング・オブ・コントの称号に相応しい施しである。ここでのチャーリーは、いつにもまして抜け目なくずる賢い。さながら人間性のあるある大辞典のような様相で、ボスには献身的な仕事ぶりをアピールし、エドナにはいじめられっ子を演じて優しくしてもらうといった、そうした人間への観察眼から生まれるチャップリンのコミック描写は、それゆえに腑に落ちる妥当性によって彼のコメディ観の基調を成しており安定かつ堅牢である。珍しく、お涙にほだされたチャーリーが、質草の対価として多く金銭を渡してしまったと気づいたとき、自らの頭をハンマーでたたくという自虐的なキャラが登場する。本作のキャラ設定において、多少滅裂な仕掛であるようだが、これ以前においてもこうした描写はほとんどなかったことを考えると、チャーリーというキャラクターの過渡期でもあったのではないか。なかなか見所が散見していて豊かな一作である。

(評価:★3)

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