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[コメント] キートンのカメラマン(1928/米)

キートンのシネマツルギーがかろうじて生きているSO-SO作品
junojuna

 「天の星よりも数多いスター」を擁する大会社MGMでの初仕事。相談役はかの名プロデューサーアーヴィング・サルバーグである。なるほどこれまでのキートン作品にはなかったドラマのふくよかさを見せるスケールに、メジャー級の製作予算、生産ラインにきれいに嵌ったかに見える出来具合はパッケージの座りの良さを呈してむべなるかなである。本作にはMGM専属ライターが22人もかかわったとのことなので、確かにハリウッドメジャーの洗礼をうけた作品であることが手に取るようにわかる。しかし、前半のあまりにも前時代的に見えるギャグ(長物を担いでのスラップスティック!)の連発は流石に首を傾げざるを得ないし、これまでのキートン作品特有のナンセンスでシュールなアトモスフィアは霧消してしまったことは無念である。いわゆる「ミステーク時代」といわれるMGM期であるが、作品のスケールそのものには新たなキートンの挑戦が見えるという点では、キートンプロ時代の盟友ジョセフ・M・スケンクがキートンに対し、大手でキャリアを積むように促した一端の意味合いが読み取れ、かつキートンが新天地での第一作であるために少なからず意欲を示して臨んだであろう気合いが見て取れるところは救いである。本作のハイライトでもある浜辺のズームバックはキートン映画の新境地を覗かせたが、キートンのシュールな世界観を決定づけていたメランコリーがペーソスに変わった時、何かが終わったような気がした。

(評価:★3)

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