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[コメント] いとはん物語(1957/日)

日本映画黄金時代の傑作としてカウントされるべきGOODムービー
junojuna

 素晴らしきバランス。素晴らしき叙情。映画の醍醐味が充溢したもっと評価されるべき日本映画の傑作である。これはイドウダイスキどころの騒ぎではない伊藤大輔の突然変異的名作である。期待もせず思いがけず出遭ってしまったこうした映画にこそ最良のシネマライフは綴られる。こういう偏見で賞賛できる映画こそが鑑賞者の愉楽というものだろう。アグファカラーで大正期の風俗を描写した滋味深いレトロタッチ。その時代を知らずともスクリーンで観る時代劇の贅沢さで充分に堪能させる郷愁の美。日本の至宝・京マチ子によるお嘉津のチャーミングな魅力は筆舌に尽くしがたいと言い過ぎなくらい誉めそやしたくもなり現代の日本映画女優が何人束になってかかっても敵わない女優力である。劇中、お嘉津が夢見る箱根シーンでの友七と二人シルエットで歩み行く画面は日本映画史の誉れである。伊福部昭の音楽がその叙情をたおやかに支え寄り添い、その美しさには涙を禁じ得ない。乙女心の壊れやすきファンタジーが男の肝を鷲掴みにする。素晴らしき日本映画である。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ゑぎ[*] 寒山拾得[*] 3819695[*] k-jam

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