[コメント] 田園に死す(1974/日)
イメージの煥発に才気は宿るが、あまりにも映画からかけ離れた画面の佇まいには真に迫る情動がなくSO-SO
寺山修司が不世出の天才であることに異論はないとしても、映画史に永遠の美を謳えたのかという点においては疑問が残る。本作が寺山世界のめくるめく迷宮的魅力を伝えるには成功して、知的で難解な前衛を好む芸術至上主義者にトラウマのようなイメージを与えたことは、その作家の幻視による影響力は誠に甚大である。しかし、語られようとしていることが、真に鑑賞者の腑に落ちているかと言えばそうではないのではないか。寺山映画には、等身大の抒情が欠落しているため、いかに装飾的に凄艶な美学をものとしても、味わいが片手落ちとなる。その意味で映画の技法による表現の妙には到達しておらず、寺山映画が語られる時の晦渋さは依然解消されていない。寺山の強靭な想像性による厚かましさが映画が映画であることを遠ざけている。
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