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[コメント] ラブリーボーン(2010/米)

幻視作家特有の「空想」と「乙女」の奔流が合流し、演出的な危うさを残しながらも作家性が噴出している力のあるGOODファンタジー
junojuna

ピーター・ジャクソンの「空想」と「乙女」の合流は、出世作『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズと、独特の切り口で清冽な印象を放った『乙女の祈り』の点と点が線となる作家性の確立が見どころのカルト的作品である。特に女優のことに少女の「顔」選びは、独特のフェティシズムが漂うスピリチュアルな趣で、PJが『乙女の祈り』でケイト・ウィンスレットを見出したのは必然であったように、本作でもそうした独特の嗜好がうかがえて興味深い。PJが幼心に映画的マグマをたぎらせたという『キング・コング』(おそらくジョン・ギラーミン版)は、どこかこの映画と風情が通うものがある。不謹慎な見方であることをおそれずに言うと、キング・コング=ハーヴィ、アン=スージーとなるモンスターと乙女の図式である。また本作はアメリカ映画の特徴としてのサバーバン・ライフをペンシルバニア州というロケーションを通して描きながら、鬱蒼とした郊外の闇に蠢くスピリチュアリティに焦点を当てるロー・ファンタジーである。これら本作を構成する要素は、これまでPJが自らの映画的使命として負ってきた主題とそれぞれ符合する。なにやら演出的な危うさを残しながらも、そこはカルトの作家であるだけに、瞬間瞬間の瞬発力は並外れている。その映画力を賜物として、作家的視点で掘り下げる必要性を孕んだ本作はまだまだ語られるべきであろう。

(評価:★4)

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