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[コメント] 伯爵夫人(1967/英)

同時代的に語れば時代遅れな感は否めないが大人の品格が漂うSO-SOムービー
junojuna

 チャップリンの遺作となった本作。60年代も中盤に差し掛かると確かに同時代的な作家の先進的な諸作品に比べると、前時代的な古臭さにあって古色ばんだ映画空間は決してお世辞にも褒められたものではないが、本当の意味でセレブであったチャップリン以外では到底描写しきれないであろうジェントルなムードは、映画に格調ある“品”を与えていて安定している。マーロン・ブランドの表情には、前作『ニューヨークの王様』で王様を演じたチャップリンが醸し出す気品の立ち現れを見てとることができる演技の確かさがあり、ソフィア・ローレンも大味ではあるが、彼女の魅惑的な素材を老練の演出力で抽出するチャップリンの女性を象る視点は達観の域にある。コメディとしても、本作にはギャグの強度は見る影もないが、チャップリン特有のユーモアのエスプリは健在であり、いわゆるいぶし銀の仕事を味わう意味と一作家の晩年の作であるゆえの語り口を合わせて、こうした状況下にある作家の作品は単純に同時代的に語ること以上の価値がある。作品よりは作為に重きを置いて捉えるべき映画の見本。

(評価:★3)

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