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[コメント] アラバマ物語(1962/米)

監督が違えば、例えばワイルダーワイラーロッセンが撮っていたらもう少しGOODなポジションに据えられていたであろうSO-SO作品
junojuna

ブー演じるロバート・デュヴァルをずっとアンソニー・ホプキンスの若い頃と勘違いしていた。記憶とはいかにあいまいなものか。だがロバート・デュヴァルがこう出てくるか!と改めて感慨が深かった。いや、それはどうでもいい。本作はやはり原作の重さにひきずられている作品であると思う。これはマリガンのフィルモグラフィが拙いせいかもしれないが、作品があまりにも没個性となっている分、傑作として位置づけられていることは認めたにしても、後世まで残るかと問われれば、そこまでのアクを生み出し切れていなかったという点で残念だ。本作をたとえばビリー・ワイルダーが撮るとするならば、グレゴリー・ペックの仕草に印象的な癖のような振りを与えて、主人公の懊悩を印象づける筆致を手に入れていたであろうし、ロバート・ロッセンが撮っていれば、もっと画面に恐怖を湛えさせていたに違いない。ウイリアム・ワイラーであれば、記憶のためのシーンの強度というものを展開していた。このように同時代の名監督が撮っていればという仮説で語りたくなってしまうところに、本作の惜しさという届かなさが残念でならない。これは原作で用意されている、ヒロイックな主人公の存在、そして、幼きハーパー・リーの隣人であったトルーマン・カポーティがモデルとなる子供たちのワールド、さらにその子供たちワールドの畏怖として存在するブーというキャラクターへの惹きつけがありながら、そのどれもが映画内物語のご都合主義によって消化されてしまうところに、映画の旨みを滅してしまう拙さが浮き彫りになってしまっている。もったいない。とにかく「もったいない」が頭に100度諳んじてしまう仕様の映画である。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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