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[コメント] 散り行く花(1919/米)

「古臭さ」にあっても許せる映画的強度の充溢にGOOD
junojuna

 「古さ」「臭さ」は当然である。何せ1919年生まれの長老映画。しかし、現在にあってもこのフィルムの発光に驚きを隠しきれない映画的強度の充溢たるやどうだろう。これは一作家の創造による結晶というものをはるかに超えて、映画の神様に運命的に愛されてしまったがゆえに生まれ出づるところとなった奇跡であると声高に叫びたくなるほどの超常現象だ。たとえばモノクロ映画でありながら、幾枚もの完成された連作絵葉書を手繰ってゆくかのごとくフィルムに定着させた色彩感覚の発露。名花リリアン・ギッシュが模る羽根を折られた小鳥のような哀感の体現。リチャード・バーセルメスが自室から連れ去られたルーシーを想って泣き伏す時の静から動へと感極まる演技の運動神経。また、父親が納戸に閉じこもったルーシーを追いかけ扉を斧でぶち破るといった恐怖シーンは、この映画から61年後、キューブリックの『シャイニング』によって映画的記憶として再現された。ゴダールの『映画史』の中でも一際輝くリリアン・ギッシュのクローズアップ。紛れもない世界映画遺産である。

(評価:★4)

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