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[コメント] アパートの鍵貸します(1960/米)

ビリー・ワイルダーの洒脱な上手さとファニー・フェイスな主演二人の存在感が絶妙なGOODムービー
junojuna

 匠の仕事と言ってよいビリー・ワイルダーの美味なる傑作である。仮に映画百年を振り返ると丁度中間点に位置するワイルダーの仕事はクラシックとモダンをつなぐ玉石の架け橋となっている。洒脱な遊びがワイルダーの美味さの生命線であるが、今作はジャック・レモンとシャーリー・マクレーンのファニーかつ確かな演技力を携えてより一層の洗練が味わえる。バックトラックのリズムにのせてタイプライターを叩くバクスターのコミカルな人物造形、バーで呆然と酒をあおるバクスターがカウンターに並べるオリーブの輪、バクスターがフランにデートの約束があると嘘を告げて、エレベーターホールで待っている女性にバクスターが寄って行く、その触れ合うかの瞬間に、脇から男が登場して女性の腕をとり去っていくシーンのスルリと交わす演出のいなし方など、粋な作為が嫌味なく作品の興を盛り上げるのに手伝っている。その表層される画面にフェティッシュな感覚が際立つところがワイルダーの真骨頂といえるだろう。そしてなによりジャック・レモンの繊細かつインパクトのある人物造形の巧さは特筆ものである。シャーリー・マクレーンも奥行きこそまだ曖昧な印象もあるのだが、ラスト、中華料理屋から逃げ出す直前の笑顔は最高級に達する輝きを見せて爽やかだ。洗練された作為の現実化こそ映画のマジックを適えて感動に至らしめる。

(評価:★4)

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