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[コメント] ダイヤルMを廻せ!(1954/米)

室内劇というジャンル演出への挑戦が中途半端なSO-SOサスペンス
junojuna

室内劇への目くばせ、当時の時代背景を受けた3D映画への挑戦、ヒッチコックが自らに枷を課す中でテクニカルな映画を撮った。演劇的な立居ぶるまいを映画に昇華させた手腕は確かだが、しかし映画は映画、あえて空間を限定する意味が立ち上がらないところに、この作品の限界が晒されている。不倫関係にあるグレース・ケリーとロバート・カミングスが序盤、キスを交わしているところに、ケリーの夫であるレイ・ミランドが帰ってくる。抱き合っていたケリーとカミングスが身体を離す様を、ドアに映る影で表現するショットなど、瞬間瞬間に立ち上がる、ヒッチコック独特の映画術は楽しませてくれるが、なんとも残念なのは、重大な小道具となる“鍵”の取り扱い方や、ミランドの時計が止まってしまっているという施しなど、完全犯罪を高らかに宣言していながら、仕掛がどうにも小手先過ぎて感心することができない。後半、ジョン・ウイリアムズの警部が出てくるあたりからは、どうにも着地に向かって強引な感も否めないので、全体的に納得感が薄い。本作で最も映画的な存在感を示しているのはやはり、ケリーを殺そうと登場するアンソニー・ドーソンだろう。ボリス・カーロフ系譜の味わい深い悪役。本作=ドーソンというくらいの刻印を焼き付けた。本作では、この当時、現代的な映画をつくろうと無理しているヒッチコックの姿が見える。確かに巧いけれども。

(評価:★3)

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