[コメント] エル・トポ(1969/メキシコ)
現実と虚構が交錯する迷宮世界の綾も、現在から見れば身ぶりに執着しすぎるきらいがあるSO-SOカルトムービー
ジョン・レノンや寺山修司が熱狂した映画として有名なカルトムービーの金字塔である。南米チリにロシア・ポーランド人の子として生まれ、パリからメキシコまでを移動するジプシー的出自が、この映画の聖と俗のカニバリズムを体現して驚異的な力を見せている。灼熱の砂漠を舞台に、奔放なまでの人間のグロテスクを照射するカオスなドラマは、人類のエスノグラフィ的省察として、哲学的な高尚を覗かせる。しかし、ポルノムービー寸前のエロティシズムの生々しい発揚や、倫理的なものを無視するかのような残酷描写の数々は、映画の芸術的立脚という脆さをクリティカルに証明してさえいる。その意味では同時代的に迎え入れられた理由がうなづけるのだが、現在から本作を顧みると、その気負いの影が見え隠れする奔放すぎたイメージには、厚かましさが浮き彫りとなって辟易してしまう。ある一時代の残滓という次元にとどまる作品だ。
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