[コメント] 月世界旅行(1902/仏)
舞台空間のスペクタクル性は新たな芸術表現の可能性を指し示したSO-SOサイレントムービー
興行師としての面目躍如たるジョルジュ・メリエスの最初で最後の一発である。確かに一発屋ではあったが、映画史的に遺産として数えられる作品を生み出した功績は、作品のクォリティ以上に意義が深い。例えば、冒頭の長いワンシーンの退屈な記録映像など、構成的に言えば、黎明期にあって他の作品と同様の垢ぬけなさはあるものの、100年ほどの時をまたいだ現代の映像作品にも通ずるフェティッシュな美術感覚は、ファンタスティックな映画芸術の誇示であるとともに、メリエスという作家のデーモン的才気の一世一代の表れだったのだと感嘆する。カレル・ゼマン、トーキング・ヘッズ、スマッシング・パンプキンズ・・・、その特異なヴィジュアルセンスのフォロワーたちは現代にも増殖中である。映画が映画らしくあることの本質を見せる殿堂入り作品である。
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