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[コメント] 風の谷のナウシカ(1984/日)

ジャパニメーションを決定づけた世界観の創造は、クールジャパンの原風景として誉れ高くGOOD
junojuna

宮崎駿の天性の才を決定づけた作品であり、日本映画の特異なジャンルとなったジャパニメーションの金字塔といえる作品として誉れ高い。この世界観が好きか嫌いかという二分の論はやはりあるだろうが、宮崎ブランドを確立したという点では映画史的にも無視はできないだろう。宮崎駿はパッケージセンス、いわゆる世界を創造する模型化が絶妙であり、神のごとき視座で作品にものを言わせる才は他の追随を許さない。これが『カリオストロの城』で留まるものでなかったことは、宮崎駿が職人的マエストロではないということの証であったし、後の『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』などで展開したチルドレンズワールドで始まったわけでなかったということは、今から思うにこの作品の誕生はとんでもない事件だったのだということに思い当たる。60年代、70年代を通して、映画はより個の内奥へと向かうシネマツルギーで展開されてきたわけだが、80年を境に映画で世界を創造するというスケールを手に入れたのは、西のジョージ・ルーカス、東の宮崎駿ということで決定しただろう。宮崎駿は本作で、人間の精神風土に根差すある風景を巧みに現実化して見せた。そしてこの達成は決して実写では実現し得なかっただろう。アニメーションであるゆえヴィジュアルの特殊性は言うまでもないが、宮崎駿作品、ことに本作で達成したサウンドトラックの具現は、アニメであるがゆえ音のすべてを手作りとする芸術の規定から生まれているものだということを強く思わされる。描かれている物語に付与される世界観の強度よりも、視覚と聴覚に幻想を生み出す世界観の創造力の強度にこそ、宮崎駿の天才は匂い立つ。芸術家を超越した創造主としての存在感がそこにある。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] Orpheus ぽんしゅう[*] ゑぎ

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