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[コメント] 五条霊戦記//GOJOE(2000/日)

これまで見てきた全ての映画の中でも最高傑作と思っている。他の人になんと言われようと。
neo_logic

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今見てもものすごい作品。源平時代の建築技術や服装、宗教的な感覚を可能な限り再現し、その中に大胆なアクションを取り入れた傑作。京劇を全面的に時代劇に入れた最初の日本映画でもある。2000年の映画とはとても思えない。是非見るべき作品である。

ストーリー展開とオチが唐突すぎて唖然とされることも多い作品だが、この映画はディティールだ。ディティールを読み解く歴史的なセンスが無いと、また役者の演技力が他の邦画と比べて段違いであることに気がつかないと、時間を無駄にする。

この映画の長所として一つ板金、彫金の再現度も評価できる。炭素を2%含有させる鎌倉以降の日本刀と異なり、当時はほぼ鈍器。直刀も多い。仏像のディティールも簡素。他の源平ドラマでは江戸期以降の新刀が使われている場合が多い。

セットとして用意された建築。いずれも老朽化していたり板が傾いていたりするのが非常にリアル。安っぽい時代劇だとやたらに美しく正方形な建物が出てくるが、実際はこの程度の修復技術だったはず。

「宗教」が非常に生活に密着しているのは、この映画の強い特徴の一つ。イギリスのドラマ「大聖堂」もそうだが、神仏を出すと民衆も貴族もストレートに「ううっ」と恐れ入る。この描写こそ中世である。

役者。浅野忠信、永瀬正敏、隆大介の自力に支えられた質の高い演技も見所。なぜか演出が大失敗していて声が非常に聞き取りにくいのだが、ちゃんと聞けば内容はある。脚本もかなり精緻な作りである。

アクション。京劇を取り入れたアクションは唯一時代と無関係だが、浅野と隆の演技は非常に自然。足の甲をかすって相手のバランスを崩したりする芸の細かさが光る。七つ道具を駆使して浅野に挑む隆の真剣な表情はまるで本職の格闘家のよう。

この作品最大の名シーンは、決闘の最中に劣勢に陥った弁慶(隆)が、自分でヴァジュラを額にぶつけるシーン。これは霊覚を司る第三の目を潰すという意味がある。僧侶である隆が神仏の加護を捨てて、実力で相手に挑むという決意を示す。

隆が第三の目を潰してからの決闘は直接的な描写が少なく、太陽や濁流や黒雲を織り交ぜながら描写していく。この手法は私は今まで見たアクションの中でも白眉と思っている。この演出を使った映画は他に見たことが無い。

私は石井の最高傑作はこれだと信じて疑わない。 たった1人でもこれを推し続ける。 全てを受け入れるつもりで見ろ。無駄なところは一カ所もない。

(評価:★5)

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