全盛期のミッキー･ロークは、仕事をよく選んでいたと思います。結果として出演作が失敗に終わる場合も勿論ありました。しかし失敗作であっても文学的雰囲気が漂っていたり、意欲的な試みが見られたりと、それなりのこだわりを持ち出演したように思える作品ばかりでした。

そんなロークの出演作品群の中において、本作の質はかなり低いと感じます。原作は犯罪小説とハードボイルドを合体させたものでして、精神科医が主人公の心の扉を、原爆被爆患者の包帯を取り替えるような慎重さで開いていく迫真のシーンがありまして、大きな見せ場の一つといえるものでした。そのシーンは映画版にもあることはあるのですが、ズタズタにカットされておりまして、そのうえ舞台となる診察室はガラス張りとなっています。重い過去を明かす場としてあまりにも可視化された場であり、演出として不適切と思いますが、これは監督の「原作みたいな辛気臭い作品、撮ってられるか！」というメッセージなのでしょうか。

カットされている部分はそこだけではありません。原作において銀行破りの作戦を気持ち悪いほど綿密に練っていた日系米人のキャラが登場しておらず、お膳立てのクオリティーが格段に下がっており娯楽作品としても褒められた内容ではありません。

映画製作のための資金調達や時間の確保が上手くいかなかったのでしょうか。大変残念でありまして、再映画化を待ち望みにしています。