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[コメント] フリーダム・ライターズ(2007/米=独)

「ホロコーストを知っている人」「…(一同沈黙。白人少年のみ挙手)」「銃を向けられたことがある人」「…(一同挙手。白人少年のみ沈黙)」
田邉 晴彦

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「教育よりもはるか以前に問題がある」というのが、本作が冒頭30分で提示してくる根源的なテーマであり、登場人物たちが乗り越えるべきハードルである。

過去の大虐殺について、机について神妙に勉強しているような余裕も理由も彼らにはない。あるのは、目の前の生死をかけた争いを生き抜く術であり、背中を預ける仲間との信頼関係である。

そのハードルに行き当たった本作の主人公である女性教諭は、それまでのお行儀のよい自らのスタイルをかなぐり捨て、生徒たちとのセッションを繰り返しながら、現実的な解決の糸口を模索していく。その過程はさながら、ブラックミュージックを原点とするジャズのセッションのようであり、言葉をつづる生徒たちはラップミュージシャンのような赤裸々さと鋭い攻撃性でもって、自らの心情を吐露していく。時間をかけて何度も繰り返されるセッション。教師と生徒の気持ちが和音を奏で、一度はすべての問題が解消され、物事がクリアになったかのように見えた。

しかし、その後にもやはり、人種間の対立は続いていて、教室の外には相変わらずの戦場が広がっている。それに対処する大人たちの間でさえ、教育論争は収まる気配すらみせない。それを根本的に変えることができるかと問われれば、作中のヒラリー・スワンク同様「判らない」と答えるしかない。

それでも“変化”に対する挑戦を人が諦めない限り、常にその先に“自由”は綴られていくのだ。実話というバックボーンがあるとはいえ、登場人物の死や提示された問題のオールグリーン化といった安易な解決に陥らなかったところに好感がもてる一作。

(評価:★4)

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