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[コメント] トイ・ストーリー3(2010/米)

人にも、オモチャにも、我々の人生には何故「別れ」が存在するのか?
田邉 晴彦

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







すきなもの同士、何故いつまでも一緒にいることが許されないのか?

きっとそれは、また新しい誰かと出会うためだ。いつか死が、ゴミ焼却炉が、彼らをとらえるその日まで。泣いて怒ったりそして笑ったりしながら、共に育っていくのだ。中島みゆきは名曲『』の中でこう歌っている。「逢うべき糸に出逢えることを人は仕合わせと呼びます」と。そんな名曲にも似た強さと優しさに溢れたアニメーション。映画史に残るべき傑作である。

補記1 アンディが次の子供にオモチャを譲るクライマックスは、彼こそがオモチャの存在に支えられていた、寂しい気持ちは一緒なのだ、ということを感傷的に、けれども清々しく描いた白眉のシーン。ちなみに、“大学に入学するときに経験する必然的な「別れ」”というモチーフが個人的に大好物である。近作でいえば『キッズ・オールライト』、邦画でも『ハルフウェイ』(のラストシーンの北乃きい)は、泣けたぜ。

補記2 燃え盛る焼却炉を前に、手をつなぐオモチャたち。他のシーン以上に、ビジュアル的にはオモチャでありながら、そこに宿る感情は確かに生命体。名演と呼ぶほかない。

補記3 本作は、『トイストーリー』を宝物のように大事に想っている我々観客にとっても、「別れ」を意味している。だが、その灯を我々の次の世代に伝えていくことはできるだろう。子供が出来たら、絶対に一緒に観たい作品である。

補記4 それは、きっと本作の生みの親であるジョン・ラセターにとっても同じ。その集大成となる「3」の監督を、次の世代に譲ったことに、本作が含むメッセージとのシンクロシニティを感じずにはいられない。

以上

(評価:★5)

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