『グッド・ウィル・ハンティング』『小説家を見つけたら』『ミルク』等、GVSが描く「才能ある若者の挫折と再生」が好き。で、『エレファント』『パラノイド・パーク』等、映像美とプレーンな語り口の耽美系は苦手。本作は後者に属する上、「幽霊」というファンタジーも盛り込まれている。作品としての質は高く、映像も編集も鮮やかで美しいが、個人的嗜好の問題で好きになれない。

また加瀬亮演じるヒロシが語る「ナガサキ」「セップク」の件、考証が甘いというか、設定が雑すぎる。特に「セップクは侍のもの。今はやらない」という発言はあきれた。敗戦の折、多くの軍人が腹掻っ捌いて責任を負わんとする姿を『日本の一番長い日』で僕は観た。あの時代に、ましてや特攻隊をつとめた男の発言としては、明らかに“軽すぎる”。自棄気味の主人公が最後まで成長しない様子にもウンザリ。