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DSCHさんのコメント: 投票数順

★3僕らのミライへ逆回転(2008/米)ジョン・ベルーシもどきなブラックの破壊力が半端で、モス・デフグローバーらの素朴な好演とのバランスが悪い。性善説に立ちすぎて、無理設定が遂にはファンタジーに変質していて悲しい。これをファンタジーにされたら悲しいじゃないか。しかし、下手っぴだろうが安かろうが、映画に限らずとも、「創ること」に飢える人々の心の琴線に触れるものは必ずあると思う。変な涙が出る。 [review][投票(1)]
★4動物農場(1954/英)寓意のための物語なので、寓意をはみ出る驚きこそないものの、「共産主義の理想郷」崩壊メカニズムの解説の手際は鮮やかで目が離せない。カタストロフが約束された物語と知っていても、ディズニー真っ青の猛毒デフォルメの容赦なさや、暗殺や簒奪、選民、動員、虐殺といったモチーフの淡々と着実・整然とした挿入が、抜き差しならない緊張を醸成。そして歴史は繰り返す(繰り返してはならない)。 [review][投票(1)]
★4王様と鳥(1980/仏)暴政への揶揄は当然だが、「自由」を一面的に「善」と捉えず、その「可能性」に放り出される厳しさ(茫漠たる荒野)や、それを獲得するために振るわれた暴力へ向けた冷静な視線が心地よい。更に、大小・高低の演出と美術が素晴らしく、映画内世界の巨大な拡がりが、作品を寓意に縮こまることから救っている・・・が、能書き以前に、王のドッペルゲンガー登場以降の不条理で美しい悪夢的世界の魅惑に酔うべきだ。キレキレである。 [review][投票(1)]
★1アイ・アム・キューブリック!(2005/英=仏)わざわざ「キューブリック」の名を選んで騙り続けるという、無謀な嘘への妄執。しかも本物と似ても似つかぬ孤独な同性愛者。何がコンウェイをそこまで駆り立てるのか、どれほどの実存的危機が彼を襲ったのか、コンセプトがネタバレしてる時点で後半の興味はその微笑ましい狂気のルーツ一点に尽きると思う。だが、有名人崇拝を茶化す笑いに逃げるだけのだらしなさ、マルコヴィッチの変態演技への甘々な依存ぶりに嘆息。 [review][投票(1)]
★3スプライス(2009/カナダ=仏)「パパとママのゲスな物語」に注目して観れば、良く出来ている。ナタリの『奇子』、みたいな喩えも出来ないではないし、『エイリアン4』の仇をさりげなく討つ。タブロイド紙的痴話喧嘩が生命倫理に絡むSFのフィルタを通して生々しく滑稽に映え、ヒトはヒトの在り様を問われる。やはりヒトとは奇怪な動物なのだ。しかしポーリーの「眉間に皺演技」が安く、ジャンル映画に堕した終盤が噴飯。 [review][投票(1)]
★3タロットカード殺人事件(2006/英=米)イヤミな映画である。ヤンヤと喝采を受ける手品師アレンが何度も宣う「あなたたちは本当にいい観客だ、素晴らしい、愛してる、ウソやハッタリなんかじゃない」(客席の静止ショットのいやらしさ!)という台詞は、明らかに同じく観衆である私たちに向けられた批判的毒だ。ウソやハッタリに決まってる、「俺の屍を越えてゆけ」って叫んでんだろコノヤロ。その意味でこの作品は『人生万歳!』よりも暗い遺言めいてこの目に映る。 [review][投票(1)]
★4人生万歳!(2009/米)厭世と屁理屈が周回して突き抜けた先が、既成価値の爆破とあっけらかんとした楽観。今や大して珍しくもない話で、それ自体がボリスに言わしめるクリシェ(陳腐な表現)であるような気もするし、ウッドの可愛さも異常とはいえ見慣れたミューズ造形の範疇だが、脚本封印から30年を経て敢えて「これでもか」と押してくるアレンの年季と提示タイミングに説得力。それこそ「クリシェ」的強度。音楽ネタが素晴らしい。 [review][投票(1)]
★4イースタン・プロミス(2007/英=カナダ=米)凶器に用いられるのは刃物のみである。「殺すこと」とは「血を断つこと」である、もしくは、「生かすこと」とは「血を続かせること」である、という「血(縁)」を巡る描写の徹底ぶりに感心。「断ち切るもの」としての「ナイフ」はその描写に正確に寄与している。 [review][投票(1)]
★3シティ・オブ・ゴッド(2002/ブラジル=仏=米)虚無という言葉すら存在しない真性無感情の次元においてこそ本物の暴力が存在する。銃が「異物」ではなく日常に平然と納まる風景。殺人が悲劇ではないという悲劇。明るく閉塞した空洞感に震撼。円環構造も脱出の不可能を示唆して効果的。そしてその世界を生きるコドモはやはりコドモでしかないという最大の悲劇。しかし安全圏から知った顔の解釈を口にすれば八方から撃たれる感のある「実話」を”過剰に”戯画化する姿勢に疑義。 [review][投票(1)]
★4ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009/日)世界の中心で「アイ」を叫んだけもの。" I =alone (わたし)"で完結する死でなく、" 相 =You are (not) alone."。 手をつないだ「ふたり」の「愛」で世界を終わらせる。いかに心性の根が病んでいようと、そういった禍々しく破壊的な画を、実は誰もが観たいものなんじゃないだろうか。「アイのビッグ・バン」なんて。無謀で馬鹿げた美しさを、正直なところ「ステキ・・・」としか形容しようがない。 [review][投票(1)]
★5フルメタル・ジャケット(1987/米=英)超絶罵詈雑言の乱射が誘う男根=銃・海兵崇拝と楽観的麻痺・無痛は仮想に過ぎない。「紛い物のベトナム描写」の現実感の希薄。報道のレンズ越し、「愛国ショーの出演者」という誤った自覚がそれを助長するが、それはたった数発の弾丸で粉砕される(渾身のスロー描写!)。弾を共に放つのはK先生。しかしジョーカーの諧謔とブタの愚鈍の反駁も、厚顔のミッキーマウスマーチと殺戮に魅入られる己を遂に凌駕することはできない。 [review][投票(1)]
★4ストレイト・ストーリー(1999/米=仏=英)「人生の収穫日」に自らトラクターで向かい、その日を家族と迎えること。たびたび挿入される麦の収穫の空撮と星空が命の連鎖を想起させる。いつにも増してセンチメンタルなバダラメンティのスコアと柔らかく優しい撮影が遂に陽光から禍々しさを除き、何より一片の星影も闇の中に認めたことのないリンチが、ロストハイウェイの爆走の果てに見出した星空に嘘はない。 [review][投票(1)]
★3ラストキング・オブ・スコットランド(2006/英)狂言廻しの記号的軽佻浮薄が過剰に不愉快だが、対するアミンの造形に筋と愛嬌すら通っているよう見えてくる所にミソがある。「怪物」を「嫉妬し恐れサッカーする過敏な一般人」という次元に引きずり下ろし鏡として対面させる。「環境」が作り出す、特殊ではない狂気。試みは基本好きだが『ヒトラー最期の12日間』の無常的境地に至らず、不謹慎との批判を恐れずに述べると、権力を巡るブラックコメディという印象に終始。[投票(1)]
★4ファニーゲーム U.S.A.(2007/米=仏=英=オーストリア=独=伊)「角」を全て奪われてから「本番」を迎えるオセロゲーム。対戦者は白。全く打ち返せない理由を理解しつつも、それを受け入れることができないまま、盤面は白で埋め尽くされ、最後に紅く染められる。死角のない暴力のシミュレーション。 [review][投票(1)]
★4フィフス・エレメント(1997/米=仏)オールドマンホルムのちょこまかしみじみ可愛らしい働きに心が疼く。ブライオン・ジェームズのフィーチャーも泣ける。ウィリスはいつもの愛嬌たっぷりの強いおじさん(××××)で、私にとってこれは「愉しいおじさん映画(お座敷遊び系)」。人選とイジリの趣味がいい(個人的感覚)。更にベッソンが真性のB野郎であることを告白してくれたら和解するしかない(結局コレもフェイクなら私は泣きますが)。 [review][投票(1)]
★2鉄男 THE BULLET MAN(2009/日)鉄男』と『AKIRA』を足して2で割り、世紀末を経た21世紀初頭という今、実写版で(あわてて)リメイク・・・した感じ。 [review][投票(1)]
★3ワイルドバンチ(1969/米)正義も悪もなく埃と血と脂に塗れてのたうち回る無意味が今日的意味を失わず、むしろ輝いていることは言うまでもない。また、蠍と蟻の咬み合いの開幕に漂う只ならぬ禍々しさ、馬の転倒のスロー描写には涎が出るが、モノクロ静止カットの挿入のタイミングがグダグダになっていくのが象徴するように、演出も意外なほど失速している。「破滅の美学」に感心しない私には演出の焦点の定まらない様相は致命的。 [review][投票(1)]
★4ウォレスとグルミット チーズ・ホリデー(1989/英)よちよちまったりでシュールなスピード感。「面倒くさくてもとにかく手作り」という意地に「無意味の意味」が滲み、「愛せ、愛せよ」と私のこころが叫ぶ・・・チョチョイっと潤沢予算とCGで仕上げちゃうのとはお話の次元が違うのだ。筋からして丸きり「無駄手間」である。でも他愛なくかわいらしい無駄手間って、本当に素敵だよね。監督はきっとそれが「映画」だと言っているのだ。人生には無駄が必要なのだ。無駄を愉しめ。 [review][投票(1)]
★4フロム・ダスク・ティル・ドーン(1996/米)「お前ら一体何を大騒ぎしてたんだ!」素晴らしきメタなボケツッコミ。 [review][投票(1)]
★4人狼 JIN-ROH(1999/日)無為な内輪もめと策謀と自己陶酔に包囲され閉塞する心。低く昏い空。虚ろな時代の暗黒の迷宮=地下水道で「赤ずきん」が流す「それでも、だからこそ愛しか寄る辺はないのに」というやるせなく苦い涙。このウエットな演出と独特の台詞回しには心の予期しない部分を突かれた。押井脚本の能書の空虚さ(本作については敢えてこの表現を使おう)はかえってベタな情感の反作用としててきめんに効を奏したと評価したい。 [review][投票(1)]