コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ほえる犬は噛まない(2000/韓国)

団地という魔宮でしょうもなくも愛しい奴らが繰り広げる、ささいなようでそうでもない大冒険。ポン・ジュノは映画界屈指のいたずらっ子だ。『殺人の追憶』以降の暗澹たる「大上段」もいいが、天才的いたずらっ子の「原点」がここにある。「必殺ショット」の連打。「面」じゃなくて「小手」の連打。ペ・ドゥナの仏頂面とラストショットで失神寸前。『キル・ビル』のトラックスーツより断然私はイエローパーカを支持する!
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







管理人さんの怪談の妙な臨場感、消毒薬散布の不穏なシチュエーション、なにもかもが唐突な「きっかけ」。団地とはまことに迷宮的だ(でもあんまり暗くしない。ここ重要)。

そしてアクション。「誘拐」したおばあちゃんの犬を抱えて背面跳びで茂みに突っ込むショットや夜道を転がるトイレットペーパー、ペ・ドゥナのファンタジックな特攻、友人(あの女優さん誰?)の猪突リカバリーなど、開いた口の塞がらない面白さ。

ポン・ジュノの「笑い」は「運命による人への嘲笑」であり、無常的な悲劇の一部として作用するとの趣旨を『殺人の追憶』以降の監督作について書きましたが、本作における笑いは純然たるブラックユーモアで、まったくストレート。犬を放り捨てるシーンや、犬食いホームレス氏の焼きごて「ビリヤード」などは悪趣味以外の何物でもなかろうが、映画の一側面とは「よき悪趣味の場」であって、本気で「うっひゃあ」と嬉々とした声をあげそうになった私は、本気で監督の「悪趣味」の共犯者なのでした。ラストの煮え切らない男の表情からペ・ドゥナの「なんとなく」充実した表情へ。爽快感も忘れないところはサービス精神か。でも嫌らしくないよ。

全く次を予想出来ないトリックスター、ポン・ジュノ。逆走して観ましたが、もう何も言うことない。どこにも隙がない。この人、つま先から頭のてっぺんまで天才だと思います(2011年現在)

しょっぱなのテロップの悪意。あ、監督、舌出して笑ったな?

※ 最後に。私は犬が大好きです。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)袋のうさぎ 寒山拾得[*] おーい粗茶[*] ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。