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[コメント] アウトレイジ ビヨンド(2012/日)

めんどくせえ、という倦怠からこそ真に苛烈な暴力が生まれる、という表現の元祖が誰か知らないが、北野武が元祖なのではと思わせる達成。いつでもその空虚の表現は巧かったけど、その逆ベクトルのキャラクターは面白いと思った試しがなかったところ、片岡=小日向の造形が異常に素晴らしい。悪徳刑事、という枠を超えた巨大な禍々しさがある。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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片岡は北野武が得意としている空虚なキャラクターの真逆の充実感がある。監督は片岡のキャラ設定にあたって、自分の好きなキャラクタリゼーションの徹底して逆を行く努力をしたのではないか。北野武の手を離れたような躍動感があり、北野の深い倦怠の陰影を際立たせている。

対立する暴力集団を潰すでもなく、生かすでもなく、報復感情を手玉に取り、半ば憎悪と抗争を制度化して維持する神の手振りが禍々しい。小日向の顔ほどこの映画で怖いものはない(まあ、前々から怖い顔の人だとは思ってましたが)。「世界」を語ることに成功している。

話が飛ぶが、『ミュンヘン』で登場する「フィクサー」の、描かれるべきだった形がこれだと思う。あの物語はこのように語られるべきだったのではないか。

監督はあまり暗喩などをしのばせる人ではないと思うが、永遠を象徴する鳳凰の刺青に味わいがあった。

ところで、殆ど同じテーマを同じ監督が、演出のベクトルを変えて続編を撮る、って他にあることなんですかね。前作なら確実に笑った表現が、全く笑えないものになるってすごいな、と思います。(例えば、ピッチングマシーンでの殺害は、その反復性と自動性が無常の空気をまとう)。充実した空虚、という世界。根っこはくだらない、という設定で、笑いを語るか、無常を語るか。そのどちらにも、このヤクザ社会という舞台は相性がいい。色彩感が(恐らく意図的に)これだけ除かれているのも珍しい。私は前作も今作も良いと思いました。前作の方が先鋭的な試みだったとは思いますが。

(評価:★4)

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