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[コメント] 仁義なき戦い 代理戦争(1973/日)

混迷が深まれば深まるほど、その愚行に注がれるエネルギーの大きさのグロテスクが際立つ。何のためかも大義も忘れ、ひたすら騙し合い、殺しあう。何故そんなに一生懸命なのか。もはや無常感に己の道を振り返る暇もなく、行き場をなくしたエネルギーが連鎖爆発する。怒りや哀しみを通り越して命の浪費を楽しんでいるような情念の徹底を前に、人間って不思議な生き物だという感想が浮かんだ。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一方で立ち上がる無常、何者にもなれなかった渡瀬の断末魔もやはり凄い。弾を撃ち込まれるたびに路上をのたうち回りながら上げる「があっ」という悲鳴に震えた(こんなにいい役者さんとは知らなかったです。)。何者にもなれぬままに終わることの焦り、反発、生への執着、しかし絶望的に確かな死の予感。剥き出しの情念がある。深作演出の真骨頂ではなかろうか。

しかし、彼等にとって何者かになるとはなんなのだろう。大義を失い愚行でしかないそれらに、それでも夢を紡がなければならない青春が哀しい。戦後が強いた、命の無駄遣い。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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