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[コメント] インサイド・ヘッド(2015/米)

イロトリドリノセカイ。小さくて巨大な冒険。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







色彩豊かな映画だ。大人になるとは、入り乱れる感情と記憶の色彩でどう世界を彩るか、ということだ。もちろんカナシミの青がなければ色彩の多彩さは生まれない。カナシミのアイデンティティークライシス克服後の色彩が素晴らしい。一方で、ライリー誕生とともに現れるヨロコビ一色の素朴に打たれるのは、汚い色も知ったオトナ特有の感傷だろう。

「イロドリ」がテーマだとわかってくる頃に訪れる忘却の谷の暗黒。イロドリに関する意味で一番イイのは、あの「虹色」の軌跡を残して飛翔するロケットだ。ピンクの象が忘却の谷に残ることでヨロコビを送り出す、そのありがちな犠牲のドラマに「オトナになる」という記憶のスクラップandビルドの切なさが結びついて、これだけでも僕のユルい涙腺には十分なのだが、上昇というアクションに「虹色の軌跡」を絡めてくるあたりが上手いなあ、と思う。単色ではなく、「ああ、虹色だからこそ飛翔できるんだな」と。コドモにはハードルの高い情感に違いない。

残念なのは、ビビリやムカムカ、イカリあたりの感情が、ライリーのクライシスの賑やかし程度で落ち着いてしまっている点。司令塔に戻るカナシミとヨロコビの救出劇での活躍が、とってつけた感が否めない。記号そのもののキャラクターならでは、ライリーの外部世界とのリンクの中で見せ場のパズルのピースが次々はまるような快感があれば、スクラップandビルドの「ビルド」の作劇に力が生まれたのでは、と思う。トラウマのピエロや悪夢のホラー描写に容赦がないところはピクサーらしくて嬉しい。また、スケートではしゃぐライリーとモニタ越しにシンクロして滑るヨロコビのダンスシーンの美しさ。記憶にまつわる作劇と、ダンス。この辺はピクサーの面目躍如と言える。

(評価:★4)

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