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[コメント] マッドマックス2(1981/豪)

「こんな世界でも、どんな生でも、生は承認される。生きたいように生き、死にたいように死ね。だが生まれたからには、いのちを燃やし尽くせ」。場違いな「Happy birthday to you」がイロニーでなく、福音であるというジョージ・ミラー流の生のアジテーション。『地獄でなぜ悪い』。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







敵方にしても主人公側にしてもやたらと生き生きしており、こういった状況下で虚無が介在しないのが特徴的だ。黄昏の世界で育まれる新しい生、のちにコミュニティの長になる少年に集約されるが、あらゆる生が肯定されている。「家族」への加入を拒んで闇に消えるマックスも含め、ただただ肯定されている。そのエネルギーが反映された演出は、その荒さ、滑稽さ、垢抜けなさも含めて血の通った馬鹿馬鹿しいまでの生命力を感じさせる。黄昏へ向けて爆走するトレイラーのイメージは忘れがたいものがある。

油田の爆破は、ならず者の追手への罠という意味あいよりも、何かを捨てなければ前には進めないという哲学も兼ねており、重層的な見応えのあるシーンだ。

ただ、二つ致命的な瑕疵があると思う。全てを失う主人公という意味での突き詰めは凡百の映画が追随出来ないレベルだが、愛犬(インターセプターって、この子の名前だと思っていた)の殺害シーンはこれを見つめる決意が欲しい。オフスクリーン処理は逃げだと思う。あと、旧世界の否定と新世界の創造という意味では、言葉を持たない例の少年が、ラストのナレーションで我々の言葉を話し出すというのはどっちらけるものがある。新しい世界にはその世界のための言葉が、魂があると思うのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)pori けにろん[*] 週一本 水那岐[*]

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