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[コメント] スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス(1999/米)

今更のようですが叩きます。20世紀末に生まれた「映画の不幸」の集大成。多分どなたかのレビューと被っていると思いますが、備忘録的に。ファン厳禁。※ 私はEP3とEP5(EP4は「心情的にはOK」)だけ好きという外道です・・・ってそれは普通の感覚なのかな?
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







SWはワイプのあからさまな多用が一つの特徴。これが功を奏するか否かが(ささいなようだが)一つの決め手。複層的に進行するスペクタクルを的確に切り貼りして成功したEP5、EP3に比し、緩慢な移動シーンばかりワイプで挟むので「気持ち」が千切れる千切れる・・・悪意かと思うほどである。そういった基本が完全に欠落しており、EP6からのインターバルに何をしていたんだと問いつめたくなるくらい映画としての威力に欠ける。演出と感情がバッラバラ。ジョン・ウィリアムズの大上段スコアが空回りする虚しさ。合戦も遂に無血/無痛の偽善と化す。新キャラの魅力の無さ。お祭りと呼んで許せるレベルではない。

乏しい技術や限られた予算の中、工夫に工夫を重ねたスタッフの苦慮やある意味青春の血と涙と汗の結晶としてのファルコン号の疾走感やデストロイヤーの重量感、そして知名度も低く若気の至りな登場人物の青臭さに共感したというのが、SWを好きだという感情の一側面なんだと、リアルタイムに経験していないにも関わらず若輩者の私は思うのですが、その意味では人気が一人歩きして予算も潤沢で俳優も使い放題、CGが既にある程度のレベルまで成熟してしまったこの20世紀末というタイミングもまた不幸だったのかもしれません。

時代の要請として旧作の魅力を「相対化せざるを得なかった」と考える悲愴のスタッフがどの程度存在したか、その「良心」によってこそ脚本の洗練やセレブリティなりの人物造形の魅力など別の輝きを模索したであろうに、この空疎なCG博覧会に堕落したのは全き「怠惰」としか形容しようがありません。問題なのは、「予定された背信」への「贖罪」に必要なはずの「良心」の不在です。CGを利用すればいい、それでいいものは作れるはずなのに。人気と観客の共犯に奢る無自覚だったのであれば、まさに映画史上最大の悲劇と言えるのではないでしょうか。

CGが実写を凌駕するという日は望むと望まざるとに関わらずいずれやってくるのかもしれませんが(私は2011年現在『アバター』でも全くなしえていないと思いますし、そこに全く価値を見出しません)、その可能性の片鱗すら見せない20世紀末に産み落とされ、CGすら驚きをもって迎えられなかったこの映画は、勝負所をはき違えて基本的な映画の魅力を何一つとして伴わない悲劇、まさに「映画の不幸」の集大成、偉大なる反面教師として歴史に名を刻むであろうと思います。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)Orpheus 水那岐[*] けにろん[*]

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