コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 空気人形(2009/日)

見終わった後にする深呼吸には、意味がある。
シオバナカオル

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この時代に見てしまったからなのかものすごく響いた。この映画は現代の満たされているようで掴み取るとそこには何も「無」い、空虚な社会そのものなのだ。

コミック原作なので多少飲み込むのに時間を要するシーンもあるが、キャストペ・ドゥナARATAという二人の「無」の演技力。景色や風景というよりもはや絵であり作品であるというほどのリー・ピンビンの「無」の映像群、world's end girlfriendの「無」の音楽は、どれも作中に漂い続ける無形である「空気」を見事に演出する。

いつからか覚えてないけど、おそらく誰しもが永遠に欲すであろう目に見えない「空気(≒愛)」。生まれてから死ぬまで、ソレを満たすことが私たち一人一人「人形(≒体)」の生きている本当の目的なんじゃないかと思えた。

エロティックなシーンこそあるもののそれが単なる低俗的な性描写ではなく、毎回誰かが誰かに対する一方向な愛情表現として映っており、哀しい。興奮どころか見ていてむしろ切なさが増し苦しくなる。たしかに素晴らしい映画だったが、見終わったあと課題の多すぎるものだった。

ペ・ドゥナの可愛さを楽しみたいのならむしろ『リンダリンダリンダ』がよい。彼女のメイド服や裸体に惹かれただけの精子脳は返り討ちにされてしまえばいい。

劇場でどかーんと見たかった。空虚な日本のその空洞性を描ききった、日本(アジア?)が世界に誇るべき佳作。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。