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[コメント] アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(2015/英=南アフリカ)

時代の進歩は恐ろしいものだ。どれだけ時代が進んだとしても、コンピュータにはない心というものを人は忘れてはならない。
deenity

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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アカデミーシーズンが近づいてくるにつれて見たい映画が多すぎるのは本当に嬉しい悩みですね。本作もその一つ。スネイプ先生ことアラン・リックマンの遺作であり、昨今話題になっているテロ問題がテーマのシリアスドラマが描かれています。 本作はドローンを使ったテロを未然に防ぐためにミサイルを撃ち込むかどうかをその場にいないお偉いさん達がああだこうだ言いながら試行錯誤する内容で、明らかにアクション物というよりはヒューマンドラマ的要素が強い。

テロが行われようとしているのは遠く離れたケニア。驚いたのはその様子を見ているのはイギリスやアメリカと言った大国だが、全くケニアとはかけ離れた土地からドローンを操り、特殊カメラによる映像を見て、スイッチ一つでテロリストを殺すことができること。技術の進歩で遠く離れた国から精密に標的を抹殺することがいとも簡単にできるのには驚きと同時に恐怖も感じた。ドローンと言っても武器を積んだ飛行機で、かなりの高度で維持するため全く気づかれずに殺すことができる。カメラも鳥型まではあり得そうだが、コガネムシくらいの大きさのカメラであれだけはっきりと映像を映し出せる。それを元にした顔認識もかなり正確。ボタン一つで国が滅ぼせる時代とも言われたりするが、人間だからこそ多くの葛藤がぶつかり、本作の完成に繋がったのであろう。

遠く離れた土地だからこそ、様々な人が様々立場から自分の思いを簡単に発言していく。中心となるのは大佐であるヘレン・ミレンであるが、長年追い求めたテロリストを逃すわけにはいかない絶対的なチャンスだからこそ力が入る。ただ、その一方で軍事的、政治的な意見も鑑みた上で答えを出すのは容易ではなく、作戦を実行に移すために手を模索する。

実際にテロが起こってしまえば、人が集まる所ならば80人程度の被害者が見込まれるそうだ。だがそのテロリストが住む家は繁華街で周りにたくさんの人がいる。被害見込も計算することができるが、近くにいる罪のない子供が65%の確率で被害を被る計算だ。 だったらどうする。80人を取るか、1人の子どもの命を取るか。先の被害を考え、未然に防ぐなら当然ミサイルを撃ち込むしかないのだが、かと言っても罪のない子の命を奪うことは決断し難い。

「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ。」という名台詞があったが全くその通りで、実際にその現場にいない人だからこそ身勝手に自分の意見を発せられるのだ。その上、他人への責任のなすりつけ合いだったり計算結果を偽ったりと、本当の意味で命と向き合えているのかと聞きたくなる。

技術は進歩して、そのうち全てを計算したコンピュータが全て効率を考えて作戦を実行に移すことができるようになるそうだが、それではいけないと思う。現実を受け止め、決して無責任に「誰かの指示に従った、コンピュータの判断だ」なんてことは言ってはいけない。真摯に向き合わなくては。人間だからこそ悩む映画。人間だからこそ答えが出ない映画。

(評価:★4)

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